まさくまの日記

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小説『和菓子のアン』に出てくる和菓子「おとし文(ぶみ)」

小説「和菓子のアン」(坂木 司 著)に出てくる「おとし文(ぶみ)」という和菓子が気になり調べてみました。

1.和菓子「おとし文」

今、小説「和菓子のアン」 (坂木 司 著)を読んでいます。

和菓子練り切り

デパ地下にある和菓子屋さんでアルバイトをする18歳の女性を主人公にした、いわゆるお仕事小説です。

まだ読み始めたばかりですが、物語の中に出てくる「おとし文」という和菓子がどういうものなのか気になり調べてみました。

コトバンクでは次のように説明されていました。

東京都中央区銀座に本店を置く菓子店、清月堂本店が製造・販売する和菓子。和三盆を使った黄身餡をこし餡で包み、強めの蒸気で蒸しあげたもの。栗のペーストを加えたものなど、季節限定の製品もある。


コトバンクデジタル大辞泉プラス )

清月堂本店さんの「おとし文」は非常に有名で私もいただいたことがあります。

丸い形で色は薄茶、ほろっとした食感で、中の黄身餡も美味しく、とても上品な味だったと記憶しています。

けれど、この小説は清月堂本店さんを舞台としているわけではありません。

しかも、小説「和菓子のアン」では、登場人物のセリフを通して、「おとし文」は次のように説明されています。

「おとし文」の形ですが、(中略)巻いた葉とそれにとまる露を模しております。

「和菓子のアン」(坂木 司 著) 光文社

清月堂本店さんの「おとし文」とは形状が明らかに違うようです。

きっと和菓子の世界では「おとし文」と一般的に呼ばれる和菓子が別にあるはずだと思い、さらにネットで調べてみました。

すると、小説に出てくるのと同じような形状の和菓子が確かにありました!

丸い餡が緑の葉を模した練切でくるまれ、その上には露のような粒状の白い練切が乗せられています。

「おとし文」が販売される季節(5月頃)になったら、是非いただきたいと思います。

2.「おとし文」の名前の由来

ちなみに「おとし文」という名前の由来は次のとおりです。

(1)「おとし文」は昆虫「オトシブミ」

なぜ餡が葉でくるまれた形をしているのでしょうか。

それは「オトシブミ」という昆虫と関係があります。

この昆虫は卵を守るために葉っぱを巻いてその中に卵を産む習性があり、その丸まった葉が道端に落ちていることがあります。

その丸まった葉を模して作られた和菓子なんですね。

オトシブミが葉を落とす季節が5月頃ということもあって、この時期になると「おとし文」が店頭に並び始めるというわけです。

(2)「おとし文」は「落とし文」

「おとし文」には「落とし文」の意味も込められています。

「落とし文」とは 「公然とは言えないことを文書にして落としたもの」という意味です。

昔は手紙や恋文などを手渡しせずに、渡したい人のそばにそっと落として拾ってもらう、という風習があったそうです。

目立たないよう丸めて落とされた手紙の形が、昆虫オトシブミが落とした丸まった葉と似ていたのでしょう。

「落とし文」と「オトシブミ」、言葉の掛け合わせですね。

お茶

「おとし文」が店頭に並び始める5月が今から待ち遠しいです。